JUNKO NOTE      

  
モンテスキュー伯爵の住んだ家

ヴェルサイユT

今年(2004)2月、ランビネ美術館を訪れた折、足を伸ばして、モンテスキューの住んでいた館の中で現存する3つの館のうちの一つ、ベルサイユ市パリ大通り(Avenue de Paris)93番地(以前は53番地)にあるパヴィヨン・モンテスキュー(Pavillon Montesquiou)を見に行った。

ヴェルサイユの町は宮殿を中心として造られており、3本の大通りが宮殿の中心=王の寝室を起点とし、放射状に町を貫いている。

その真ん中の一番の大通りがパリ大通りである。

ヴェルサイユに何故パリという名が付くかといえば、当時フランスの都市ではパリ行きの郵便馬車が使う通り(=パリの方面に向いているということ)をパリ通りと名付けていたというから(鹿島茂著「馬車を買いたい!」参)、この中心の通りはパリに向かう時に使われる道だった筈である。

事実現在でも練兵場(アルム広場=現・宮殿前の駐車スペース)から、ヴェルサイユ・パリの南西の端ポン・ド・セーヴル間を2・30分で結ぶ路線バスが出ている。Viroflay、Chaville、Sevreという3つの市を通っている路線であるが、町が変わると確実にバスの窓から見える通りの風景の雰囲気が変わるのが面白い。

ヴェルサイユは今でも高級住宅地の区域らしく、パリ大通りから見る通りの眺めは官公庁の建物を初めとして大きく古いつくりの建物が多く、通り自体片側2車線全4車線の上に通りの両側に沿ってかなりの幅のグリーンゾーンがずっと付けられたゆったりとした大きな通りである。

それが、市が変わって通りの名が変わると途端に庶民的(?)に変化する。 道幅も狭くなるのだが、さらにパン屋、レストラン(中華料理店もあり)、キオスク(何でも屋風)など生活感が感じられる。

市庁舎もこの通り沿いに3つ(少なくとも3つ)あり、最初はヴェルサイユ市の大きく立派なもの、小さいけれど昔のブルジョアの屋敷を転用したような可愛らしい感じのもの(こんな市庁舎なら手続きに行くのが楽しみになりそう)割と普通で印象が薄いものとさまざまで景色自体の変化も楽しめる。

終点のポン・ド・セーヴルからはメトロでパリの街中に出ることができる。


No.12 年月【2004.9】 分類[モンテスキュー、家] 登録日-2004/09/30 00:19


ヴェルサイユU

montesque's house1さて、モンテスキューの館であるが、パリ大通りのはずれ近く、Porchefontaine、と呼ばれる地区にある。 ヴェルサイユの上で紹介したバス・RERいづれもProchefontaineという名の停留所(宮殿前の始発から4・5つ目)・駅からすぐのところである。

ヴェルサイユに家を探しに来たモンテスキューが一目ぼれしたといわれるこの館は、1894年〜99年までの約5年間彼の住居となった。

「石彫りの籠で果実の盛られたものを柱頭とする石柱を持つ高貴な鉄格子門が二つあって、そのしたに館への二つの入口がある。入口のそれぞれは、異なった威厳をもって向かい合う二つの小館に通じ、両館の正面外壁の間には盛土がしてあった。対称形に左右に一筋づつの小径が均整をとって芝生の斜面を登って中央の数段の階段へ導き、さらに半ば庭園、半ば果樹園の敷地内へ通じていた。」(「1900年のプリンス−伯爵ロベール・ド・モンテスキュー伝」P・ジュリアン著、志村信英訳 国書刊行会 p217)と特徴を表現されている。

montesque's house2果実の盛られた石彫りの籠の柱頭、二つの入口、向かい合った二つの小館−現在もこの特徴は残されていて、実際に人が住んでいるが、館の入口の上の<Pavillon Montesquiou>の文字もそのまま残されている。

建てられた年代も建てるよう命じた人物も不明ではあるが、通りに垂直に建てられた庭園を挟む一対の館、通りから丸見えの庭。パリ大通りをずっと歩いてみて大抵の通りに面している住居は通りに面した正面は壁面で建物の入口を入った先に中庭が広がるケースが多く、通りから庭が丸見えのこのような造りの館は珍しい、という印象を受ける。 (以前は53番地だったこの館は今は93番地という住居表示である。100年あまりの間に大きな敷地を持つ館が随分と住宅・集合住宅に小分けにされたのではないかと推察される)

門と塀は前記の通り、鉄と石と煉瓦より少し小さいブロックの石で造られており、その石のブロックを積んで作られた部分はもう少し宮殿寄りにあるルイ16世の妹マダム・エリザベートの館(この離れにモンテスキューの叔母の一人が住んでいたとのこと、現在は州の所有)の広大な敷地を囲う石塀の造りと似ているように見受けられることから、大まかではあるが、18世紀末〜19世紀前半に建てられたものではないかと考えてもよいのではないかと思う。

No.13 年月【2994.11】 分類[モンテスキュー、家] 登録日-2004/11/25 10:22



Back to Junko Note Top Page Back to Junko's Room