私は戦争に反対します
この文章は、2001年に書かれたものです。ごく短期間公表して以来ずっと
掲載を行わなかったものですが、今もこの気持ちに変りはありません。
あれから2年。また新たな戦争が行われ、正義を自称した者の勝利と
なりました。是非の評価は長い年月が過ぎないと分りません。
でも、改めて考えて、この文章を公表することを決めました。
リンクやBBSでのご紹介はどうぞお止め下さい、私は運動家ではありません。
ただ、母として、妻として、一人の人間として、平和を望む事を
止めたくはないと思います。2003年6月10日 長野千裕
多くの方同様、2001年9月12日深夜(現地時間9月11日早朝)、私も
アメリカニューヨークの世界貿易センタービルに飛行機がぶつかり、
もう1機が突っ込み、そしてあの美しいツインタワーが崩れ
去っていく姿を見続けた。
ツインタワーから駆け下りたという後輩のご主人。
アメリカに足止めされて状況を逐次レポートしてきてくれた知人。
即日、全社に海外出張を差し止める指示を出した会社。
輸出入停止に伴い自分が取り扱う荷物が動かなくなったと聞かせてくれた知人。
届かなくなっていくのは医療機器も同じ。
日本国内でも航空便に対し発令された1日留め置きの措置、時限爆弾対策か。
崩れ去ったツインタワーと累々たる瓦礫のフィルム。
行方不明者は6000人を超えるという。
この数値は夫が親族3人を失った阪神大震災の直接死亡者数とほぼ同じ。
わずか20人弱の実行犯が、ビルに飛行機を当てる技術を得るのにかかった費用、
おそらく一人あたま100万円程度、すなわちわずか2000万円で殺された人間、6000人。
迅速な日本の反応は、「日本は全面的にアメリカ合衆国を支援する」
犯人は、犯行を指示した者は、個々の人間であるにも関わらず。
犯人たる証拠が未提出であるにも関わらず。
犯行がテロリズムであり、戦争行為である以上、保険会社も国家も被害者に保証金を
支払う必要はない。すなわち、経営破綻（破産）を逃れることができる。
これによって破産を逃れられる企業はほとんどが全世界を支えている大企業。
戦争となれば、弾薬が消費される。救済される軍事産業。
戦争となれば、兵士が登用される。救済される失業問題。
戦争となれば....。
日本にも既に潜伏しているというテロ。
東京・川崎のビルには爆弾を仕掛けたという脅迫電話。幸い人的被害はなし。
本事件と前後するように猛威を揮いだしたいくつものコンピュータウィルス。
その度にネットワークが切断され、ウィルスチェックを走らせる。
文句も言えず、ただ待つ時間が重なっていく。
決して対岸の火事ではない。我が国にも対抗力があることを示さなくては降りかかる
火の粉は払うことができない。
それでも。
私は忘れることができない。
私は、あの崩壊していくツインタワーを忘れることができない。
私は、出産を控えた娘を気遣った伯父の声を忘れることができない、彼は震災の
1週間後、淡路島の母親の葬儀中に心臓発作で死亡した。私の夫は何もできぬまま、
彼が死んでいくのに立ち会った。
彼らは、この悲しみの6000倍を100円ショップ価格で一瞬にして手に入れた。
勝利の報酬として。
憎しみを持つことはた易い。
この憎しみを持つことは正当に許される。
自衛のためだと認められる。
相手を殺したいと思うことは全世界から支持される。
だが。
一方で私は親である。私の長男は12年前、あのベルリンの壁が開いた年の、今ツイン
タワーが消えていったのと同じ9月12日に産まれた。
12歳、あと4年で父が第二次大戦時に少年兵として採用された年になる。戦争にとって
4年は短い。
私は息子を戦場に送り出したいとは決して思わない。
何人たりとも、戦場に送り出したいとは決して思わない。
力を貸して欲しい。
一個人、一市民では何もできないかもしれない。
しかし、どうか、平和を望むことに協力してください。
思いがあればかなうとは限らない。
けれども、思いがなければ、決してかなうことはない。
私は戦争に反対する。
生きていれば、人と人とは、どんな人であっても、理解しあうことができる。
理解と賛同は違うけれども、理解することで初めて互いを尊重することができる。
有無を言わさず腕力に訴えることは、大人のすることではない。
腕力を持っていても腕力に訴えることだけが手段ではない。
腕力は破壊しかもたらさない。ツインタワーと同じに、壊れることしかもたらさない。
自分の思いを信じることから何事も始まるのです。
心を静かにして、平和を望むことに、どうぞ、どうぞ、協力してください。
戦争に反対してください。
2001年9月27日 千裕